暗号資産(仮想通貨)交換業者のDMMビットコイン(東京都中央区)が、事業廃止を決定しました。同社は2024年5月に約482億円相当のビットコインが不正に流出し、その後、顧客向けサービスの大幅な制限を余儀なくされていました。経営の再建を断念し、預かり資産はSBIグループのSBIVCトレードに2025年3月を目処に譲渡される予定です。

半年以上続くサービス制限
DMM.com(東京都港区)のグループ企業であるDMMビットコインは、仮想通貨交換業界の中堅に位置づけられていました。不正流出後、顧客は新たな仮想通貨の購入や他の業者への資産移管ができない状態が半年以上続いています。同社の2024年3月期の事業報告によると、顧客口座数は45万件、預かり資産総額は約962億円とされています。これらの口座と資産はSBIVCトレードに移管される予定で、譲渡に伴いSBI側が30億〜50億円程度を支払う見通しです。

SBIグループにとってのメリット
SBIVCトレードは70万口座を有する交換業者で、SBI証券との連携を活用し顧客を獲得してきました。DMMビットコインの顧客層は異なるとされており、資産譲渡によって新たな顧客基盤の獲得が期待されています。

金融庁がずさんな管理体制を指摘
DMMビットコインでは、仮想通貨を保管するウォレットの運用体制に問題があり、流出事件が発生しました。金融庁は2024年9月、管理体制の不備を理由に業務改善命令を出し、リスク管理態勢の見直しを指示しました。さらに、暗号資産取引業協会に対しても業界全体での自主点検を要請しています。

業界の再発防止策進む
仮想通貨業界では、不正流出事件を受けた規制強化が進んできました。2017年に交換業者の登録制が導入され、2020年からは顧客資産をインターネットから隔離した「コールドウォレット」で保管することが義務化されています。しかし、DMMビットコインのケースではコールドウォレットの運用に欠陥がありました。業界内では再発防止に向けたサイバーセキュリティ強化の新たな取り組みが進行中です。

今回の廃業決定は、日本国内の仮想通貨業界における規制とリスク管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。顧客資産の安全確保が一層求められる中、業界全体での改善が急務です。